2013年02月26日

『 仙台市医師会学術奨励賞を受賞して 』

 この1月に仙台市医師会から学術奨励賞を頂きました。それに対する謝辞を仙台市医師会報に書き留めましたので、それを転載させていただきます。

 この度は仙台市医師会学術奨励賞を頂戴し誠に光栄に存じます。ご推薦いただいた諸先生、永井幸夫会長はじめ審査いただいた諸先生に深く御礼申し上げます。この賞は私が長年に亘って携わってまいりました脊椎外科診療に対して頂戴したものと解しております。その意味で、これまでの診療、研究に対してご指導ご協力いただきました東北大学整形外科脊椎懇話会の諸先生にも感謝申し上げたいと思います。

 振り返って、私と脊椎外科との出会いは、卒業間なし、麻酔科研修の2年目に西多賀病院で国分正一先生(東北大学名誉教授)が始めていた脊椎外科に出会ったことに始まります。このことがきっかけで、私は整形外科に進むことになり、以後、整形外科の研鑽と共に、大後頭孔から仙骨までall roundに熟せる脊椎外科医を目指して臨床に励んでまいりました。当時は脊椎外科自体がまだ黎明期ということもあって分からないことだらけであり、頸椎から腰椎にいたる様々な疾患の臨床研究に取り組ませていただきました。

 脊椎の病気といいますと、7割が腰関連であり、3割が頸椎関連であります。しかし、私が特に長年に亘り取り組ませていただいたのは、頸椎と腰椎の間にある胸椎部脊髄症です。これは後縦靱帯骨化症、黄色靱帯骨化症、椎間板ヘルニアなどによって脊髄が圧迫され下肢に麻痺が生じてくる疾患です。今は大分popularな疾患となりましたが、30数年前は、CTもMRIもありませんでしたので、診断が困難で、疾患の実像すら見えていない状態でした。画像診断法も不十分な脊髄造影だけでしたので、脊髄を圧迫する病変がみられると下るのは脊髄腫瘍程度の診断だけでした。また、骨化性病変に対して十分な診断もなく手術が行われていたため、術後に両下肢麻痺という話も珍しくはありませんでした。そんなことで、国分先生と共に取り組み始めた訳ですが、手術頻度は今でも年間10万人に1名程度ですので、なかなか症例が貯まらないのが悩みの種でした。病態を整理し、治療法を確立するのには時間がかかり、自ずとライフワークとなってしまいました。

 中でも、黄色靱帯骨化症につきましては、故若松英吉名誉教授に病理学教室に出向させていただけ、CT、手術を通してみてきた黄色靱帯骨化の病態を病理学の立場からも検討することができました。いってみれば、病理学特有の正常と異常の狭間から疾患を見直すことできた訳です。とかく基礎医学が臨床から乖離しがちな昨今ですが、医学においては絶えず臨床を意識した基礎研究を行うべきと感じております。

 さて話は変わりますが、私が日々の臨床にあたって心がけておりますことは、「患者さんとともに歩む医療の実現」であります。患者と医師の関係をアルピニストとガイドの関係になぞらえた方がおりましたが、私もそのようにありたいと思っております。患者と医師が手を取り合って病に立ち向かうためには、患者さんにご自分の病気をよく理解していただき、医師が専門的な立場からその手助けをすることが大事であります。そんな意味で、仙台整形外科病院に移りましたからも、仙台市医師会の市民講演などで脊椎の話をさせていただけたことは、大変ありがたいことと感じております。今回の受賞にあたりましては、そんな点もご評価いただいたと聞き及んでおり、恐縮至極であります。

 還暦を過ぎた医者に学問の奨励はもういらないように思いますが、後進育成の奨励と考えて、ありがたく受賞させていただくことに致しました。また幸いにして、目も、手も動きますので、これからも私でお役に立てる患者さんには手を携えて力をつくして参りたいと思っております。今後とも、皆様のご指導ご鞭撻、宜しくお願い致したいと存じます。
posted by 佐藤哲朗院長 at 17:46| 日記